囲碁でつながる日本とマレーシア 視覚障害者囲碁の国際交流をしました(後編)
皆様
いつも私たちの活動に対し、ご支援とご協力をいただき、ありがとうございます。
前回に引き続き、2026年9月7日から11日までのマレーシア訪問について、後編をお届けいたします。
今回は、100周年記念セミナーと感謝ディナーへの参加、そして現地での新たな交流についてご紹介します。
4日目 マレーシア視覚障害者コミュニティの歩みと不屈の精神 100周年記念セミナーと感謝ディナーへの参加
今回、私たちは、マレーシアの視覚障害者支援に関わる記念式典に招待していただきました。
会場は、私たちも宿泊していたACホテル・クアラルンプールの大会議室です。
会場内には、さまざまな団体による展示ブースが設けられ、私たちも囲碁コーナーを出展させていただきました。
この日は、視覚障害者の方々だけではなく、視覚障害者支援に関わるさまざまな団体や関係者の皆さんが来場され、囲碁コーナーでは、多くの方がアイゴを実際に触り、興味を持って質問してくださいました。
視覚障害があってもなくても、アイゴを使用することで、同じ盤を囲み、対等な立場で囲碁を楽しむことができます。
今回の交流を通して、そのことを多くの皆さんに知っていただけたのではないかと思います。
点字プリンターとパズルゲームとの出会い
私たちの囲碁コーナーのほかにも、点字プリンターのコーナーや、マレーシアのパズルゲーム「ビーグリー」のコーナーなどがありました。
点字プリンターで出力されたマレーシアの地図を触らせてもらい、マレー半島の形や、リゾート地として有名なペナン、サバなどの位置を触って確認することができ、とても嬉しかったです。
「ビーグリー」というパズルゲームは、数独とチェスを組み合わせたような、とても興味深いゲームでした。
アイゴと同じように、駒を固定できる仕組みになっていて、触ることで盤面をイメージしやすい構造になっています。
こうした工夫には、今後のアイゴのバージョンアップにも活かせる部分があり、とても参考になりました。
また、お互いにボードゲームという共通点があったからでしょうか。
気がつけば、私たちも相手のコーナーに行ってゲームの説明を聞き、相手の皆さんも私たちの囲碁コーナーに来て、アイゴについて質問してくださいました。
お互いがお互いのコーナーに行き来していたのが、とても面白かったです。
やはり、ゲーム好きは世界共通でつながりやすいのかもしれませんね(笑)。
100年の歩みと、これからの未来
セミナーでは、マレーシアの障害者支援に関わるさまざまな方々が登壇され、これまでの歩みや、これからの視覚障害者支援のあり方について、様々な立場の視点で語られていました。
残念ながら、私は囲碁コーナーで皆さんと交流していたため、セミナーの講演をすべて聴くことはできませんでした。
感謝ディナーへの参加
セミナー終了後、同じACホテルの会場で行われた100周年記念の感謝ディナーに出席しました。
マレーシア各地から集まった視覚障害者の方々や関係者など、100名以上の皆さんが参加され、私たちもステージ前の来賓席に着席し、美味しい食事をいただきながら皆さんと交流することができました。
おそらくマレーシアの文化の一つだと思いますが、ディナーの間、ステージではずっと歌手の方が歌っていました。
私がこれまで出席した同じような形式のディナーでは、あまり経験したことがなかったので、生歌を聴きながら食事を楽しむという体験は、とても新鮮で印象に残りました。
さらに、歌手の方が、私たち日本人が参加していることを知って、「谷村新司さんの昴」と、渡邊はま子さんの「支那の夜」を歌ってくださり、思いがけない日本の歌のプレゼントに、とても感激しました。
そして、せっかく日本から招いていただいた機会ですので、私たちからも音楽を届けたいと思い、同行した声楽家の上田喬子さんに、アカペラで歌っていただきました。
マレーシアの皆さんにも、とても好評でした。
囲碁だけではなく、音楽もまた、言葉や国境を越えて人と人をつなぐ素晴らしい文化ですね。
5日目 アズリンさんのお店でマッサージ
5日目は、NCBMの囲碁体験会でサポートしてくださったアズリンさんが経営するお店を訪れ、マッサージを受けました。
アズリンさんは、日本の盲学校の理療科で学んだ知識を活かし、現在は経営者としてお店を構えています。
私たちも、お世話になったお礼を兼ねて、そして旅の疲れを癒すためにお邪魔しました。
お店では、視覚障害のあるスタッフの方々がマッサージ師として働いており、私も他の皆さんと一緒に受けてとてもリラックスすることができました。
せっかくの機会なので、働いていたスタッフのシャルルさんとアレクさんに、アイゴを使って囲碁を教えることにしました。
シャルルさんは日本のアニメーションが好きで、その中でも「ブルーロック」が好きだそうです。
さらに驚いたことに、「名探偵コナン」の話になったところ、囲碁の碁石が点字のように並べられ、ダイイングメッセージになっていたエピソードを知っていました。
私もその話を知っていたので、シャルルさんと2人で大いに盛り上がり、一気に距離が縮まりました。
シャルルさんもアレクさんも、とても飲み込みが早く、囲碁を覚えたら、きっと強くなるのではないかと思います。
せっかく始めた囲碁をこれからも続けてもらえるように、アイゴをそのままお店に置いてきました。
こうして、日本に戻る直前にも、マレーシアで囲碁を打つ仲間が増えたことが、とても嬉しいです。
マレーシア訪問を終えて
今回のマレーシア訪問を終えて、私が特に強く感じたことがあります。
それは、囲碁には、人と人をつなぎ、国と国をつなぐ力があるということです。
マレーシアにおける視覚障害者支援の歴史的な節目に、日本視覚障害者囲碁協会として参加できたことは、大変意義のあることであり、光栄に思います。
今回、私たちを招いてくださり、100周年記念式典の準備でお忙しい中、たくさんの配慮をしてくださったウォン・ユーン・ルーンさんと奥様のクリスティーナさんをはじめ、NCBM、MABの皆様、そしてサポートしてくださったアズリンさん、今回の交流に関わってくださったすべての皆様に、心から感謝申し上げます。
今回のマレーシア訪問では、視覚障害者の皆さんに囲碁を体験していただき、アイゴを実際に使っていただくことができました。
そして、単にアイゴを寄贈して終わりではなく、来年11月には日本で開催される囲碁大会への参加を目標にしてくださっている方々もいます。
今回のアイゴの寄贈は、マレーシアで新しく囲碁を始める人たちの未来につながる、大きな一歩になったのではないかと思います。
また、今回の訪問を通して、私自身も「アイゴをもっと世界中の、まだ囲碁を知らない視覚障害者の皆さんに届けたい」という気持ちが、さらに強くなりました。
「すべての人に囲碁を」という理念のもと、障害のある人と障害のない人をつなぎ、国や言葉の違いを越えて、人と人が交流できる場をつくっていきたいと思います。
そして、これからもアイゴを世界へ広めていきたいと思います。
今回のマレーシア訪問は、私にとって、本当の意味で視野が世界に広がる貴重な経験となりました。
囲碁を通じて生まれたマレーシアの皆さんとのつながりを、今回だけで終わらせることなく、これからも大切に育てていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも日本視覚障害者囲碁協会の活動へのご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。


