【特別寄稿④(最終回)】囲碁ライター品田渓さんによる「第2回誰でも囲碁大会」自戦記

2023/10/16

皆様
いつも品田記者の自戦記をお楽しみくださり、誠にありがとうございます。

これまで私達を楽しませてくださった品田記者の自戦記も、いよいよ大詰め、最終譜となりました。

一つ前の第3弾はこちら
https://aigo.tokyo/news/1272

<前回までのあらすじ>
白の晴都君が右辺、左上辺、左辺と、どんどん確定地にする中、黒の品田記者は持ち前のポジティブシンキングで食らいついています。
ですが、ついに目算をしてしまった品田記者がどうするのか……。

それではお楽しみください。

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<第2回誰でも囲碁大会最強戦決勝譜―ライター品田渓の振り返り・最終譜>

ごきげんよう。第2回誰でも囲碁大会最強戦決勝譜、ライター品田の振り返りも最後の1譜となりました。前譜はついに目算をした品田が「もはやこれまで」と覚悟を決めそうなところで終わりました。私は「もはやこれまで」と思ってから投了するまでが長いかもしれません。皆さんは碁会所などで「もう終わりだ」「こりゃだめだ」と言いながら永遠と打っているおじさんに会ったことがありますか?私が碁を習い始めた20年前にはたくさんいらっしゃいましたが、今はどうでしょう。ちなみに、私の場合も声にこそ出しはしませんが、同じです。いわゆる往生際が悪いというやつで、人によってはみっともないと思うかもしれませんが、上手くいけば粘り強いとも言われます。
では本譜に進みましょう。

碁盤サイズ:19
黒:品田渓
白:岩崎晴都
白174手目: 11の十三
*白優勢なので、13の十三にツイで十分。岩崎さん、少し打ちすぎました。
黒175手目: 13の十三
*ここでコウになったので、劣勢の私はウキウキです。コウに勝つことができれば少なくとも5目くらい差が詰まりそう。それでもまだ足りないですが、動揺してひょっとしたら間違えてくれるかも!?自力でどうにもならないので、相手のミスを待つ作戦です(笑)。

白176手目: 13の十四
黒177手目: 4の十
白178手目: 3の十二
黒179手目: 13の十三
白180手目: 17の五
黒181手目: 17の四
白182手目: 13の十四
黒183手目: 7の八
白184手目: 6の九
黒185手目: 13の十三
白186手目: 17の六
黒187手目: 14の十二
*中央のコウは解消し、代わりに右辺でコウが始まりました。

白188手目: 13の九
黒189手目: 12の九
白190手目: 18の七
黒191手目: 5の八
白192手目: 5の九
黒193手目: 17の七
白194手目: 18の三
黒195手目: 15の二
白196手目: 18の七
黒197手目: 4の九
白198手目: 5の八
黒199手目: 17の七
白200手目: 8の十二
黒201手目: 9の十二
白202手目: 18の七
黒203手目: 7の六
白204手目: 6の四
黒205手目: 17の七
白206手目: 8の十六
黒207手目: 9の十六
白208手目: 18の七
黒209手目: 2の九
白210手目: 2の六
黒211手目: 17の七
白212手目: 17の十八
黒213手目: 18の十九
白214手目: 18の七
黒215手目: 3の三
*コウダテで私がここに切った時、岩崎さんが「ん?」という表情をしました。

白216手目: 19の八
*コウを解消されて気づきました。黒215は無コウだったと。どういうことなのか、続きを見ていきましょう。

黒217手目: 2の二
*白1目を取って隅で生きれるかなと思いきや・・・

白218手目: 2の三
*ここに切られて欠け目です。
黒219手目: 3の一
白220手目: 2の四
黒221手目: 11の一
白222手目: 9の一
*この後黒5の二にツイでも白6の一で上辺は生き。黒は打った分だけ取られてしまいました。

黒223手目: 18の五
白224手目: 13の八
黒225手目: 12の八
白226手目: 5の十八
黒227手目: 7の十六
白228手目: 6の十四
黒229手目: 6の十八
白230手目: 19の六
黒231手目: 5の十九
白232手目: 4の十九
黒233手目: 6の十九
白234手目: 15の十七
黒235手目: 15の十六
白236手目: 6の十二
*黒の投了。白番、岩崎さんの中押し勝ちとなりました。

以上で振り返りは終わりになります。ここまでお付き合いいただいた皆さまはお気づきかもしれませんが、本局は品田の完敗です。ところが、意外にも終局後はギリギリの半目勝負を演じたくらいの充実感がありました。どんなにチャンスのないワンサイドゲームだったとしても、やはり真剣に碁を打つのは楽しいものです。決勝の舞台で岩崎さんと対局できたのは本当に幸せなことでした。

最後に、アイゴについて少し書かせてください。
私はアイゴを使って対局するのは本局が2回目です。1回目は「囲碁サロン天元・結」で打ちました。その時、私はせっかくならしっかり体験したいと思い、近所のドラッグストアでアイマスクを探しましたが見つからず、仕方なく「めぐりズム蒸気でホットアイマスク」を買っていきました。(2回目となる本局ではアイマスクは付けていません。念のため)
その時のお相手の方は柿島さんのお弟子さんで、全盲の方でした。序盤は何度確認してもヒラキの位置が分からなくなるし、接近戦では何度確認してもどこで切り違えているのか分からなくなって、お相手の方に「アタリですよ」と教えていただく始末。意識の中では完全に修羅場なのに、目の方はホカホカと温かく、「お願いだから私をリラックスさせないで!」と行くアテのない怒りを覚えつつ打ち進めました。
しばらくしてお手洗いに立つためにホカホカアイマスクを取り、時計を見て愕然としました。まだ中盤も入り口なのに、すでに2時間が経っていたのです!そして、盤を見てまた愕然としました。思っていた碁形と違う・・・。結局その碁は帰宅時間が大幅にオーバーしてしまっていたので、打ち掛けにしていただきました。お相手の方には長考に付き合っていただき、アタリを教えていただき、打ち掛けにも快く応じていただき、本当に感謝しています。
長くなってしまいました。つまり、何が言いたいのかと申しますと、アイゴで対局されている視覚障害のある方たちは本当にすごいということです。岩崎さんは弱視で、正確な形は手で確認する必要があるそうです。しかし、その確認はサッと一瞬碁盤をなでるだけ。私がアイゴで対局した時にはおそらく盤から手が離れたのはお相手の手番の時だけだったと思います。
ここに至るまで、岩崎さんら視覚障害のある囲碁プレーヤーの方々は並々ならない努力をされてきたと思います。私は鍛錬の重みを感じました。と同時に、練習をすれば、経験を積めば、こんなにスムーズにアイゴで対局できるようになるのかと目から鱗が落ちた心地もしました。要するに、アイゴは素晴らしい発明です!

品田の自戦記はこれにて終了です。皆さまとどこかで碁が打てることを願っています。それでは、ごきげんよう!

記・品田渓

対局後に笑顔で握手する品田記者と岩崎さん

 

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